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「浦賀水道」 2003創刊号
浦賀水道に船影の絶えることはない。晴れた日には房総半島の山並みが手の
届くほどの距離に見える。その半島の尽きるところから太平洋が広がっている。
一日600隻の運航があるというこの水道には、150年前のペリー来航に端を発し、
以来海を渡って多くの物資と船員たちの志が往来してきた。真夏の眩しい水道を
眺めていると、潮の流れの中にそんな歴史が今なおゆっくりと刻まれつつある実
感をふと覚える。
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「カラマツ林」 2004冬号
「・・・からまつはさびしかりけり たびゆくはさびしかり
けり」白秋の詩にあるカラマツは、周囲の木々よりも
遅く黄葉し、初冬の森に彩りをとどめる。カラマツが寂
しいというのは、針葉樹なのに落葉しやがて枯れ枝を
晒すからだろうか。しかし、その黄金色は森が長い冬
の眠りを前にして放つ鮮やかな光彩であり、一冬越せ
ば柔らかな芽吹きは一斉に春を告げる宴のようでも
ある。実に多彩な表情を持つカラマツ林である。
サイズ: 250X260o
2003年9月 山梨県甲斐大泉村
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個人蔵
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「新緑のブナ林」 2004春号
ブナ原生林を抱く月山では、雪解けを待ちかねた新芽が一斉にほころび始める
と、やがて新緑は淡い緑の雲をたなびかせるように山腹を駆け上がっていく。湖
畔に立つと、斑模様の残雪と水面を伝う風が、冷たく頬を過ぎっていった。
サイズ: 260X280o
2004年5月 山形県西川町(月山)
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「高原の空」 2004夏号
天地が爽快に広がる野辺山の夏。最高1375mと日本
一高い標高を走る小海線の線路からちょっと足を運
ぶと、幾重にも続く野菜畑の向こうに、八ヶ岳の山塊
がその全貌を現す。大陸的な香りさえ漂う高原の大
気・・ぼんやりと佇んでいるうちに、陽は既に高く昇っ
て空が忙しく動き始めた。
サイズ: 340x253o
2003年7月 長野県南牧村(野辺山高原)
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個人蔵
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「海流の秋」 2004秋号
紅葉は山腹をつたって下りてくるものだが、冷たい流れに近いせいか、渓流沿い
の彩りは存外早くやってくる。人気のない上流へと遡ると、瀬音と一面の紅葉を
独り占めにできたりして気分がいい。毎年、こんな秋との出会いが待ち遠しい。
サイズ: 340x253o
2003年9月 福島県只見町
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