山麓絵画館


2012年11月 「おいでやぎゃらりー」


〜個展展示作のうち当HP未公開作品をまとめて掲載しました〜
〜会場に張り出した一言ご挨拶も好評でしたので末尾に載せました。〜







                                                    個人蔵
「信州峠への道から」

Arches F8相当
2011年11月 須玉町小尾


この絵に描かれている集落は、最近よくモチーフとしている小尾の御門という地区である。信州
峠に向かって県道を北上し、みずがき湖の上にあるトンネルを抜けて直ぐ、左手に初めて集落
が見え始める所だ。黄葉に囲まれ、静かでのんびりとした時がそこに流れているようであった。
(「水彩で描く美しい日本〜輝ける中部〜」に掲載した一点)












「秋深まる」

Arches 385 x 513 mm
2011年11月 須玉町小尾


この絵も御門の集落。上の絵とは反対に県道の高い位置から集落を見下ろした構図である。背後の
黄葉の森を柔らかく立体感のある表現とし、人家や迪などの生活圏をメリハリのある表現で描き分
けてみた。自然に身を任せながらも、その厳しさと対峙してきた村の姿が描きたいと思ってのことである。












「浅川集落と八ヶ岳」


Arches F8相当
2012年1月 高根町浅川


これもよく描いている浅川の集落である。迫力を持って迫る八ヶ岳が、この集落ほど手に取る
ように見える場所はなかなか見当たらない。集落と山、そのどちらも主題となり得る風景は、
なかなか絵にはし難いところがあるのだが、ひるまずに、その双方とも密に描き込んでみた。
(「水彩で描く美しい日本〜輝ける中部〜」に掲載した一点)









「新緑の集落」

Fabriano Etra White 385 x 513 mm
2012年5月 須玉町小尾


小尾は御門の集落、新緑の華やぐ季節である。この集落を一番ワイドに捉えた構図であるが、
画面の左右にある道が絵を引き締めてくれ、下の水田が安定感をもたらしてくれている。新緑は
一段と柔らかく漂う雲のように集落を覆っていたので、そんな雲を描くような積もりで彩色を施した。










「新緑と八ヶ岳」

Fabriano Etra White 385 x 513 mm
2012年5月 長野県 川上村


川上村は御所平の中心辺り、千曲川の右岸からは八ヶ岳連峰が上空たなびくように見渡せる。5月
には、残雪の峰峰が河岸丘陵を埋め尽くす新緑に映えて、ちょっと贅沢な風景が出現する。川沿いに続く
平地は生活圏、この絵ではさらに下の千曲川まで描き入れたので、上下四層構造の風景画となった。










「朝の甲斐駒」

Fabriano Etra White F8相当
2012年5月 長坂町小荒間


1年のうち1週間前後にわたって見られる水田。田植え前に土壌を落ち着かせ、水温を暖める
ための期間だが、風がないとこの絵のように鏡効果がいつにない風景を創りだしてくれる。八ヶ岳の
南麓からは、対岸の甲斐駒を映したそんな光景が最も印象的で、朝のいっときは息を飲むほどだ。















一言ご挨拶

 ご来場ありがとうございます。「おいでやギャラリー」での個展は2年ぶり、これで4回目となりました。小淵
沢に移住してから7年間、相も変わらずここ八ヶ岳界隈の風景を描き続けております。私の知り合いの画家
には、当地で5年間風景を描き続けてから"もうここを描くのは卒業した"として都会に帰っていった御仁がい
ました。"卒業した"という言葉、これには少々違和感を禁じ得ませんでした。一生富士山をモチーフとして追
い求めている画家もいますし、生涯最上川を描き続けた画家もいました。どんな風景であっても、そこに注
がれる眼差し如何によって風景画の世界は如何様にも広がり、深まるものだと思うのです。それを卒業した
とするなら、風景に対する感度不足もあってのことと言えるわけで、そうであれば描く面白味も失せてしまう
ことでしょう。

 かく言う私には、八ヶ岳界隈を一生のフィールドと決め込むほどの覚悟もなく、卒業への見通しが格段ある
わけでもありません。確かに、移住当初と較べれば、風景から受ける鮮度感はそれなりに薄らいできてはい
ます。それでも描き続けているのは、その時々の心境とか、感興を覚える対象とか、要するに描きたいと思
う風景が年齢なりに変わってきたり、突如として絵心を突き動かす対象に出会ったりするせいだと思ってい
ます。昨年春には、あの震災直後に咲いたサクラに生命の息吹を感じ、サクラばかり描いていました(是非
展示したかった作品も何点かあったのですがお見せできなくて残念です)。そしてここ2、3年、私は山麓界
隈にある集落に目が向くようになってきました。今回の展示作でも半数以上はこうした集落をモチーフとした
もので、これまでの傾向とは大分趣を異にしていると感じられるかも知れません。遡って移住当初は山や森
など、自然一辺倒の風景ばかりを追求していたことを思うと、隔世の感もあります。いま何故集落か? 自
問してみますと、周囲の風景へのごく普段着の視線とか風景への温もりの追求といった理由に加えて今ひ
とつ、かつて日本の原風景をなしていた集落への憧憬と一種名状し難い衰退美のようなものをそこに感じる
ことが一因かと思われます。・・・などと思いを巡らせる一方で、以前の様にふと無垢の自然に目を凝らして
描いたりすると、これがなかなか新鮮な気分でもあるのです。こうなると何やら私が浮気性なだけと取られ
かねませんが、この山麓には多少の浮気心には十分応えてくれる多様な風景があることは確かですし、多
少の浮気心は絵心を動かす大事な要素だと勝手に解釈し、面白く描き続けてゆければと思っています。

 最後までお読み頂きありがとうございました。引き続きごゆっくりとご覧下さい。

2012年11月 栗原成和









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