山麓絵画館


発刊物掲載作品のコーナー(いきいき水彩画)


「よ〜そろ」巻頭画
「いきいき水彩画」



  「いきいき水彩画 7」(2005年12月発行)
  〜掲載作品と文章〜
   

<癒しの山里> 只見 〜森と水の四季

奥会津の一角、新潟との県境に接する只見町は、伊南川と只見川の流域に開けた僅かな平野部を
除いて、その大半が山の中である。名だたる豪雪地帯で、冬はクルマの乗り入れもままならぬほど
の厳しい自然に閉ざされるが、その分、春はこぼれるばかりに輝きを放つ。雪の下で一冬越した野菜
は独特の風味を蓄えて美味しいというが、只見はまさしくそんな風土にあり、地味の肥えた自然と
人々の温さが魅力である。
この只見町には、知人の写真家が農家を借りてつくった活動拠点があって、私はそこを何度か訪れ
ているうちに、只見の自然にすっかり親しむようになった。
絵の取材も四季を通して・・・と言いたいところだが、実はその名だたる豪雪の季節には一度も足を運
だことがない。それでも、降雪のあった晩秋や、豪雪の名残を留める春先にはやってきた。そんな中
で描きためた作品から、タイトルとした「森と水の四季」に相応しい何点かを選んで掲載させていただ
くことにした。
只見にゆったりと流れる自然の息遣いを感じていただければ幸いである。


(掲載文面通り、絵の下の日付は制作した年月日)






「午後の田子倉湖」31.0 x 41.2p
(2005年 9月)

むせるような緑が湖畔を覆い尽くす夏は、風景として単調となりがちなので、山肌の色合いに
変化をつけ、静止した水面の表情を意識して、スケッチ風に描いてみた。小出から只見に向かい
六十里越えのトンネルを抜けると、眼下に田子倉湖が姿を現す。奥只見山系からの豊富な水を
湛えたこの人造湖には、いくつもの岬が突き出ていて水没したかつての入り組んだ谷筋が見てとれる。




                            個人蔵 

「ブナ 盛夏」42.0 x 33.0p
(2005年 9月)

近くにあるブナ林に足を運んでいるうちに、お気に入りのブナもできてくる。この絵もそんな一本。
夏には大きな樹冠がつくる緑と木洩れ日の空間が何とも涼やかで、そこにいるだけで幸せな気分
になってくる。私はブナを見るのも描くのも好きである。季節毎の表情もいいし、一本一本がまるで
人格を持っているようで、描いていると木と対話をしているような気にもなる。
 






「新緑の流れ」 45.5 x 38.0p
(2001年 8月)

この絵は、私の好きなスポットから、そんな春を目一杯画面に取り込みたいと思いつつ描いた
一作である。只見に遅い春が訪れると、森や水は一斉に生気に満ち溢れ、私たちの心もウキウキと
膨らんで、ついあちこちに飛び回ることになる。黒谷川が山間から抜け出す場所に行ってみると、
ブナの山は新緑で盛り上がり、雪解け水を集める渓流は一段と瀬音を増して流れていた。






「山村の朝」 25.0 x 34.0p 
(2005年 9月)

山あいの朝は霧がかかることが多い。陽が昇るにつれて霧は空と地表部分から薄れていき、やがて
山腹をつたう一条の雲となって消えていく。視界が悪くても諦めずに出かけると、あちこちで墨絵の
ような風景が現れては忽ちその濃淡を変えていく。この絵は、そんなスリリングな一時である。








「残照」 25.0 x 34.0p 
(2005年 9月)

田植え前の水田は、空や山を映して山間の風景にことのほかアクセントを添える。
この日は夕映えがとても印象的であった。スケッチをしていると夕闇はみるみるうちに濃く
なってくるので、何枚か撮った写真を参考にして仕上げてみた。







「ホオノキの水辺」 46.2 x 38.7p ・・・・ギャラリー<風景画>に展示
(2002年 11月)

流れが瀞となっているこの場所は、瀬音も遠のいて静寂に包まれている。
落葉したホオノキの造形と静止した水辺の表情を主題に据えて、深まり行く秋の一時を掬いとろうと努めた。
黒谷川の流れを右に左にしながら狭い砂利道を遡っていくと、いつの間にか深山幽谷の雰囲気に取り囲まれる。
森と流れがさまざまに絡み合う様は、特に春や秋には魅力的な絵の題材を提供してくれて興味が尽きない。








「朝、煌めく」 39.4 x 46.0p
(2002年 1月)

ある晩秋の早朝、山の端から顔を出した太陽が、視界の一角を煌めかせる瞬間に遭遇した。
黄葉の樹木だけが光彩を放ち、まだ暗い日陰の林を背景にして鮮やかに浮かび上がっている。
この一瞬を目撃した刹那、完成画のイメージが頭を過ぎった。
のちに、絵の具と気ままに戯れなが、画面上にそんな光景の再現を試みた。






「只見川 初冬」 38.7 x 46.2p・・・・ギャラリー<風景画>に展示
(2002年 11月)

よく訪れる橋の上に来てみると、押し寄せる圧倒的な水流は、周囲の冷たい大気をも一緒に運んでくる
ようで、心身ともに引き締まる想いがする。そんな流れを真正面から受け止める気持で描いてみた。
年間を通して豊富な水量を誇る只見川は、時にゆったりと、時に急流となって会津の山間を流れ下る。
11月末のこの日は、例年より早い降雪に見舞われた直後で、それはやがて小雨模様に変わっていった。
 






「雪解けの斜面」 45.5 x 38.0p 
(2001年 5月)

この一枚も、そんな行き止まりの場所で雪解けの山の斜面をスケッチし、墨絵風に仕上げた一作である。
4月初めに訪れた只見。山裾には黄緑色のフキノトウが顔を出しているが、山道に入ると
冬の痕跡を至る所に留め、雪崩や地滑りに遮断されてお目当ての場所に辿り着くことができない。






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