作家から一言
この度はご来場ありがとうございます。
八ヶ岳山麓に移り住んで3年半、7月から現地で始めた水彩教室もお陰様で盛況です。
今回は移住後に開催する3回目の個展です。
広大な裾野を擁する八ヶ岳山麓は、豊富な日照量にも恵まれ、四季を通じて開放的で屈託のない風景を欲しいままにできます。
少し足を伸ばせば信州の山岳風景にも出会えます。それでも東北のブナ林が懐かしく、今年は山 形県にも遠出をしました。
所変われば筆を動かす気分も変わってきます。地形や気候、植生の違いがつくり出す多 様な日本の風土は、際立った四季の
彩りとも相俟って、その雄弁さは世界にも例を見ないものと言えるでしょう。こ の日本の四季と風土を絵に掬いとっていきたい
・・私の変わらぬ願望です。
今回出展しているのは42点。現場で描き上げた作品と、アトリエで描き上げた作品がほぼ半々です。前者はい わゆる
スケッチ(素描)と呼べるもので、風景と直接対話をして即興的な気分で描き上げたものです。これに対して 後者は、仕入れた
モチーフを元に家でコツコツと描きおこすのですが、構想から仕上げまで時間がかかりますの で、表現もきめ細かなものに
なります。それで思い出すことがあるのですが、4年前の個展のとき(このときは家で 描いた絵ばかりでした)如何にも大家風
の老画伯が来られ、一つひとつ観ては肯いてこう言い残して帰られました。 「ここまで描けたらあとはどれだけ崩せるか、つまり
クラシックからジャズにできるか、ということかな」。頷けるよう な、頷けないような・・・。私はどちらのジャンルも好きだし、絵も
その時々の想いで様々に表現できたらいいという考 えです。それでもこの言葉、頭の隅っこに引っかかっていて最近自分の絵
を眺めるに、どうもこれは私の性分なの か、ジャズどころかむしろバロックの方に寄っているかも、と思ったりもします。絵は
それをご覧いただく側の主観に 任せるべきものですから、こんな比喩に深い意味はありません。ジャズにも憧れつつ、ときに
クラシックの楽章も描 きたい・・あれこれと定まらないのは、私がまだ老成の境地にはほど遠いからだと、勝手に納得しています。
「おわら風の盆」は、私がずっと拘り続けているテーマで、個展の度に描いては出展しています。そう言えば、純日 本調の
おわら節にも私のイメージは膨らみます。「おわら」への想いをなぞり、その情緒の一端を感じ取ってもらえ れば幸いです。
どうかごゆっくりとご覧下さい。
2008年12月 栗原 成和(マサカズ)
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