山麓絵画館


フィールドノート2003〜2006年



2006年 ↓

○お酒の美味しい季節!(12月14日記)

 12月に入って二度ほど雪がちらつきました。いずれも束の間に庭や木々が白く模様替えし、斑模様の動くカーテンは直
ぐに上がってしまいました。暖冬の気配はここ山麓でも例外ではないようで、昨年とは大違い。こんな冬はドカッと来ると地
元の人は言ってます。本日も空は鉛色。私もクルマのタイヤを履き替え、辺りでは野焼きの煙も立たなくなって、冬ごもりの
シーズンインです。
  そしていよいよお酒の美味しい季節! 私もつい先日、かつての飲み仲間と箱根で一泊泊まりの忘年会をしてきたところ
です。小淵沢〜甲府〜富士〜三島〜小田原〜箱根湯本〜強羅と、六つもの鉄道路線を使って辿り着いた箱根は、湯煙と
自然と設備と至る所を繋ぐ交通網で、何だか観光地という揺り籠の中に入り込んだ印象でした。あの箱根フリーパスという
のは使い甲斐があるものです。バスや登山鉄道、ケーブルカーにゴンドラ、海賊船まで何でも乗り放題。その全部に乗っ
て、二日目には芦ノ湖西岸を3時間半かけて湖尻まで歩きもしました。もちろんお酒もたらふくやって、最後は念には念を
入れて小田原の居酒屋で酒盛りの締めくくりをやり、帰路はロマンスカーで新宿へ。そしていつものスーパーあずさで八ヶ
岳に帰ってきました。以前は横浜に住んでいたのであれほど箱根も近かったのですが、どういうわけか足が向きませんで
した。たまに行ってもクルマのせいか、渋滞に遭ったり疲れたりでいい印象がなかったのでしょう。それが今回は大いに箱
根を見直しました。都心に近いところであれだけの変化に富んだ自然があり、ミュージアム等の見所あり、食事処や宿泊
施設が整い、交通が上手くレイアウトされていて、しかも受け入れる側の洗練されたサービスが行き届いているという点で
やっぱりこれは国際的な観光地というに相応しい所です。久しぶりに飲んで乗り物に揺れて楽しい思いをしたせいで評価
が上がったこともありますが。
 ・・・絵とは関係のないフィールドノートとなってしまいましたが、さすがにわが八ヶ岳山麓が箱根のようになって欲しいと思
っているわけではありません。自然と生活がゆったりと溶けあっているのが山麓のいいところなので、むしろこれ以上観光
地化して欲しくないのが素直な気持ちです。高根町のある集落でスケッチした一点を載せました→山麓スケッチ館


○狙い通り、白い北アルプスが・・(11月11日記)

 ずっとこの機会を狙っていました。7日夜の寒冷前線通過で一荒れきた翌朝、多分北アルプスは雪景色に様変わりして
いるはずと踏んで、私は前日の夜からクルマを駆って出かけました。北アルプスを描くことは私の当面の念願だったの
で、以前から物の本で研究し、いくつかのスポットに狙いを定めてのことです。早朝一番で行動が起こせるよう、その夜は
長野自動車道の梓川PAで久しぶりのクルマ泊、冷え込んだ翌朝は日の出前から目的地に向かってクルマを走らせまし
た。既に北アルプスはうっすらと茜色で案の定雪をかぶっています! 青みを帯び始めた空には雲一つありません。この
日の行程は、大岡村から信州新町を経て小川村に出るというもので、二つの山越えをする県道は、その至る所からアル
プスが望めるはずです。運良くいけば青空と雪と紅葉の三段染めが。
 これまた久しぶりに心急く気持ちで麻績I(オミ)ICを下り、県道12号線を北上。峠道を何度か曲ながら上るうちに、最初
のポイントと目される所以前に既に常念から蓮華岳にかけての連なりが目に飛び込んできました。朝日はまだ手前の低い
山並みには届いていません。さらに右手には、あの独特の双耳峰の鹿島槍が。そして五竜から白馬に続く後立山連峰は
白さが一層増し、連なりは朝日を受けて輝いています。これぞ北アルプス! もうわけもなく感動しています。私は昔から雪
の山を見ると体内を一陣の冷気が吹き抜けるような感じを受け、背筋がピンとなる思いがするのですが、この朝も同様で
す。あ〜いいな、とわけもなく嬉しくなるのです。それで、何度もクルマを止めては撮影。大岡村の展望台でスケッチ。その
あと腹が減っているのに気付いて握り飯の朝食。そしてまた、同じことの繰り返しで12号線を走りきって信州新町を抜け、
そこから今度は小川村を目指して36号線を北上。鬼無里の手前まで行ってみることにしました。

・・・ 写真は、県道12号線を北上しながら撮影した北アルプスです。・・・
  常念岳(左)から連なる常念山脈        爺ヶ岳〜鹿島槍ヶ岳(中央)〜五竜岳が真正面に。     さらに白馬三山が・・・。

 小川村の山道に入る頃となるとかなり陽が上がって、眺める北アルプスの東面には陰影が増してきます。こちらも期待通
り、目論見通りで、紅葉はやや陰りを見せていましたが、それでも三段染め! 描きたかった画題をたくさん手にするようで
ご満悦です。景観としてちょっと異なってくるのは鹿島槍以北の後立山連峰が俄然主役となってくることと、中景の低い山
並みがずっと近くに割って入り、そこに山麓の営みが牧歌的な表情を添えてくれることです。これがまた堪らないのか、カメ
ラマンもかなり増えてきました。スケッチを2点、撮影多数・・・。
  帰路は36号線を戻ってそこから美麻村へ抜け、497号線を南下して大町へ。この497号線、旧くは長野に抜ける峠道
で、途中大藤とか小藤といった集落からのアルプスの景観も素晴らしいものです。ここから先も同じことを書くことになるの
で、感動話はこれまでとします。
地元の人から聞いた話をいくつか。
大岡村で・・・アルプスがこんなに白く見えるのは今期初めて。例年よりちょっと遅いかも。「春もいいですよ」は、他の所でも
たびたび耳にしました。
小川村で・・・果樹園でスケッチをしていると、園主から「朝夕は熊に注意して」とのこと。ここでも村の歴史にはなかった熊
の頻繁な出没があって、電柵を設ける農園もあるとか。熊は蚊取り線香の臭いを嫌うとのことで、この園主も蚊取り線香の
準備をして回っているところでした。奥山放獣した個体が再び人里に現れているとのことです。
この村ではまた、通行止めの県道があって、その標識で迷っていると一台のクルマが止まってくれて懇切丁寧に迂回路を
教えてくれました。接した長野県民はみな親切でどこか違う、という印象を持つのは私だけでしょうか。


○暖秋?・・山麓の黄葉はイマイチ(11月6日記)

 前回、今年の紅葉は期待できるかも知れない、と書いたのですが、その後ダラダラと暖かい日が続いて寒暖のメリハリに
欠けたせいか、山麓の紅葉はどうも冴えません。昨年見慣れた同じコナラの木立を見てもそのことは一目瞭然。黄味が足
りずに枯葉色が多く混じっている有様です。全体としては貧相な感じで、一斉に錦織りなすという感じではないのです。それ
でも林縁を散歩すると、ダンコウバイやウリハダカエデの黄色が鮮やかに輝いています。すっかり落葉した木もある一方で
ヤマモミジ系の五葉のカエデはいつも通り、ここぞとばかり我が身を紅く染め抜いているようです。暖秋という言葉はあまり
聞きませんが、やはり今年は暖かな秋なのです。昨年は既に暖を求めていた時期なのに、我が家の主暖房もまだスイッチ
を入れていない状態です。
 当家の周辺にはホオジロがよく姿を現すようになりました。カケスもときどきやってきて、お気に入りらしいシラカバの枝に
留まっている姿を目撃します。キジの一家が隣の草地をのんびりと横切ったりもします。蕎麦畑の上では、ハクセキレイの
つがいが上下に波打つ独特の飛び方で動き回っていました。穏やかな日和ですが、野鳥たちはそれでも活発に冬支度に
かかっているようです。そういえば、今年は全国的に里への熊の出没が相次いでいるのですが、山梨県も例外ではありま
せん。昨日は、南アルプス市の高速道脇に現れたようですし、ここ小淵沢でもずっと下った集落の外れで現れたようで、い
ずれもこれまでの生息域からすると、想像もつかぬほど離れた場所です。サルも同様で、元々小淵沢では南端の釜無川
沿いの森には棲息していて、農家とサルの闘いは厳しいものがあったのですが、それがずっと北に上がった林や畑にも現
れるようになっているようです。今年はヤマグリが小粒で実の付きも悪いようですし、クルミも同様のよう、昨年クルマで走
っているとプチプチという実を踏みつぶす音を、今年はあまり聞いていないことに改めて気付かされます。動植物にとって
は蓄えには厳しいシーズンを迎えているというわけです。


○あちこちで秋体感!(10月28日記)

  秋の陽はつるべ落とし・・・と言いますが、秋そのものが、さわさわと近づいてきたと思ったら、つるべ落としのように通り
過ぎてしまうといった感覚を、皆さんもお持ちではないでしょうか。紅葉も、最高の華やぎを見せてのち、足早に色褪せてい
きます。ですから、ドンピシャリの紅葉に巡り会えるのは本当に少ないものです。八ヶ岳の周辺だと今は1200〜1300メ
ートルあたりが紅葉のピーク。我が家のある1000bは間もなくです。
  昨年思うに任せなかった紅葉(この辺だと黄葉と書いた方がピッタリですが)の取材を重ねています。秋は行事も多く、
このかんけいで25日にはバスを借り切って上高地に出かけました。上高地は五千尺ホテルの名で知られるように1500
bの標高。さすがに落葉広葉樹は黄葉もピークオフを迎えていましたが、カラマツの黄金色が見事でした! どうも八ヶ岳
周辺のカラマツよりも一段と黄金色が鮮やかなようです。やはり寒暖の差が激しいせいでしょうか。カラマツの黄葉は、い
つも一番最後にやってきて、他の広葉樹の黄葉が下り坂になる頃にその最盛期を迎え、最後まで森に彩りを残してくれま
す。上高地にやってくると、いつも明神や徳沢方面に足が向くのですが、今回は梓川沿いに大正池方面を徘徊しました。
川沿いの黄色と、背後の山腹に点在する黄や赤、それにダケカンバが晒している白い幹が入り交じった、上高地特有の
秋模様が何ともいい感じです。バスターミナルの下流、梓川が蛇行する河原で一点だけスケッチしました(→スケッチ館
V)
  明くる26日も好天だったので、今度は秩父の瑞牆山(ミズガキヤマ)方面への取材に。この山は八ヶ岳山麓からもあの
特有の岩峰が、緑の山並みの中に露出してはっきりと望めます。花崗岩のさまざまな形がモザイク模様のように山容を形
づくっているとても魅力的な山で、深田久哉も絶賛しています。この山は、近づくほどに木々に遮られてその姿を隠してしま
うのですが、今度はっきり分かったことは、川上村に近い黒森という集落と、数年前につくられたみずがき自然公園がある
場所だけが、その全貌を見わたせる場所ということでした。その黒森の集落の外れから、瑞牆山スケッチをしました(→ス
ケッチ館V)。こちらの紅葉は増、カエデやナラ類、シラカバの多い、いわゆる日本的な紅葉のシーンです。
 ・・・というわけで、お膝元の八ヶ岳取材はこれから。今回は、久しぶりにスケッチ館(山麓スケッチ館ではなく)への新作を
登場させた次第です。


○この秋、実りはダメでも紅葉は期待できそう!(10月13日記)

  個展を終えてから、それまで先延ばしにしてきた所用が諸々あって、暫くは絵筆も取らない毎日が続きました。漸くスケッ
チに出かけたのが10月10日のこと。いやになるほどの長雨が明けて、抜けるような秋晴れの日が続いたので、さすがに
じっとしていられなくなったのです。久しぶりにお気に入りのスポットに行ってみました。それは、うちからクルマで6〜7分、
日本の高山トップスリーが見えるということで「三峯の丘」と名付けられた開けた場所です。この日は富士山と北岳の頭がく
っきりと見えましたが、既に陽がかなり上がっていたせいか、第3位の穂高連峰(正確に言うと奥穂高岳)は、空の中に溶
け込んでしまったようでその姿を確認できませんでした。コスモスが咲きほころび、稲田は半分ほどが刈り入れを終わって
います。何とも広やかで気持ちのいいこの場所で2点ほどスケッチをしました(→ 山麓スケッチ館)。
  さてこの秋、紅葉は如何なものかと連日周囲をチェックしているのですが、千b付近では、ここにきて色づきが急速に進
行中です。低木ではハギが既に黄葉を終え、ツタウルシは真っ赤、ヤマウルシがかなり紅く色付いてきました。高木では
トップバッターのサクラは既に紅葉のピーク。シラカバやカツラはかなり黄色が混じりはじめ、ナナカマドは緑の葉が赤味に
染まりつつあります。場所によるのですが、ヤマモミジかオオモミジ系のカエデ類は、既に紅葉に覆われた株が増えだしま
した。これから暫くは好天が続きそうなので、この間気温が安定して下がるようだと、少なくとも昨年以上のいい紅葉が期
待できるかも知れません。八ヶ岳の山腹を眺めていると、およそ1500〜1600メートル辺りの斜面は、かなり黄赤味を増
した色合いに変わっているのが遠くからでも分かります。
 しかし、どうも天候不順で山の実りは思わしくない様子です。山麓の柿の木も、ヤマグリも今年は不作。個展のコーナー
に展示した「山麓の柿の木」のあの株も、見に行ってみるとあの絵が嘘のようにまばらにしか実が付いていませんでした。
ドングリの類も不作のようで、豊かな実りの方は期待できそうもないことは、里への熊の出没が頻繁なことでも分かります。

 いずれにしても、昨年はあまりものにできなかった黄葉(紅葉)の佇まいを、今年こそたくさん描こうと意気込んでいます。
秩父や南アルプス方面の山懐にもちょっと入り込んでみたいので、いずれその方面のフィールドノートが書ければと思って
います。


○真夏の山麓(8月16日記)

 山麓も真夏の真っ盛りで、日中は強烈な陽射しが注ぎます。ただ、木陰に入るとスーと涼しくなり、日が沈む頃は心地よ
い気温となります。当家は標高1000bで、下に住む人は「あそこは山ん中」と半分冗談で言いますが、確かに一転俄に
かき曇り・・・といった事態は多いようです。数日前は、その一転・・・があり、夕刻になって雷鳴が聞こえ出したと思ったら、
突如としてバラバラという大きな音に驚かされました。何が起こったかと外を見ると、親指大の雹(ひょう)です。それが屋根
を打ち、クルマを打ち、そしてたちまちウッドデッキを転がり、庭のくぼみはビー玉を集めたようにすっかり白い吹きだまりと
化しています。あとで見聞したところでは、数キロ離れた小荒間という場所では、この雹がさらに大粒で(2〜3p大と言って
ました)、温室は壊れる、畑は大被害、クルマの屋根は波打つといった、相当な被害を被ったようです。私もその付近を通
って、収穫期のトウモロコシ畑では7〜8割方萎れるように倒れた無惨な姿を目撃しました。いまさらながらの自然の猛威
です。
 この山麓でも、今年は降雨量が多く、日照不足であったため、農作物への影響がいろいろ出ているようです。それでも地
の収穫物はまさに自然の恵みで、山麓に移り住んでから、私も野菜や果物を食す機会が増えています。このところ農に携
わることが結構多く、本日も仲間内で管理する大豆畑の草むしりと収穫を手伝ってきました。隣の農家の畝は、雑草を放
置していたために、胸元当たりまでの高さに茂った雑草で大豆の苗も隠れてしまっています。奮闘すること3時間、一仕事
終えて、我々の畑から取り立ての枝豆を茹でてもらうと、これが何とも美味! お礼に差し入れてもらった農家のスイカが
これまたシャキッと甘く、農作業の汗が治まって疲れが癒されるのでした。
 さて、農家のような話ばかりになってしまいましたが、個展まであとひと月を切り、いよいよ追い込み体制となっています。
目下のところ、不足している夏の題材を描こうと出かけるのですが、強い陽射しに晒されるは、木立の中の日陰に陣取る
とヤブ蚊に襲われるはで、真夏のスケッチはなかなかままなりません。山麓の夏の風物詩でもあるヒマワリをスケッチした
一点を山麓スケッチ館に載せました


○長雨(7月23日記)

 いやになるほどの長雨でした。各地で相当な被害をもたらしたようですが、八ヶ岳山麓は幸い大過なくこの一週間をやり
過ごすことができました。ここの台地は元々が火山噴火によってつくられたものなので、溶岩層が地中何重にもあり、雨水
はその隙間を通って地下に吸収されてしまうそうです。地上に流れ出ないということで、川が少ない換わりに湧き水が多い
のも同じ理由に寄ります。そうは言っても、野菜などへの影響は避けられなかったようで、折角の実りを控えてちょっと心配
です。
 さすがに、戸外でのスケッチはご無沙汰ですが、天気に関わりなく、個展に向けてアトリエでの絵を制作を続けています。
個展は「八ヶ岳山麓の四季」としたものの、秋を描いた作品が少ないので、目下、取材した中から描きおこしをしているとこ
ろですが、気分的には、やはりいまの季節感に浸りながら、その季節らしい絵を描くに越したことはありません。とはいえ、
ときに秋めいた空気をイメージし、ときに春到来の喜びを思い出しながら、制作を進めています。そんなわけなので、今月
の一枚(来月も同じかもしれません)をなかなか掲載できないままでいましたが、漸く梅雨の明け間に我が家から見えるシ
ラカバをスケッチできましたので、スケッチ館に展示します。



○1年も半分以上が・・(6月19日記)

 もう決まり文句ですが、月日の経つのは早いもので既に梅雨の真っ最中。一年の半分以上が過ぎ去ってしまいました。こ
の春の日照不足のせいで、この辺でも作物の生長が遅れているようです。高原とはいえ本日も蒸し暑く、散歩やスケッチに
は麦わら帽子が必需品となりました。野鳥たちも爽やかないい天気だと活動も活発となるようで、そんな日は朝からさえず
りが絶えません。キジの鳴き声に始まって、シジュウカラ、ゴジュウカラ、ヒヨドリ、ムクドリ、カワラヒワ(覚えた野鳥の名前
を並べさせてもらいました)、それに、先日は我が家の庭にもアカゲラが現れてくれました! その庭ですが、放っておくとた
ちまちイタドリが頭を出してきます。抜いても抜いても頭を出してくるこの植物は、ちょっとのことではめげない生命力がある
ようで、ニッポンのW杯での不信など何処吹く風、憎いながらも見習わねばなりません。
 南麓では晴れても山の見えない日が多くなって、緑もむせかえるほどになってきたので、このところスケッチをする機会が
減っています。その分、アトリエにこもって完成画を、と努めているのですが、結構用事もあってままなりません。W杯という
厄介な代物もあるし・・・。先週末は地元、山梨中銀の小さな支店に絵を搬入し、ロビーに展示してきました。実は、9月に東
京での個展も決まって、これから作品の品揃えにかからねばなりません。京橋の「ギャラリーくぼた」というところで、キャン
セル待ちをしていたら9月11日からの1週間空きが出たものです。これから手抜きをせずに取り組まねば・・・。
 
 今月は、梅雨の晴れ間でのスケッチ→ 山麓スケッチ館と、アトリエで描いた2点(いずれも春先の光景で→ 山麓絵画
を展示します。
   

 ←ある夕方我が家にやってきたアカゲラ。
  庭に置いた丸太の椅子を突っついていまし
  た。その姿を、慌ててガラス戸越しに撮った
  ものです。


○春の陽光戻る!!(5月22日記)

 八ヶ岳山麓では殆ど1週間、ろくに陽射しを見ないまま過ぎました。フィリピンに上陸した台風1号のせいです。それが昨
日は久しぶりに晴れわたって、本来の5月が帰ってきました。ここぞ、とばかりスケッチに出かけて描いた3点を展示しまし
(→ 山麓スケッチ館)
 この季節、週末になるとやはり人出が増すので、私は観光スポットを外して(と言っても何時もそうなのですが・・)、ここぞと
思う何箇所かのポイントに行ってみると、何処もいよいよ新緑が濃くなって、久しぶりの太陽を謳歌している様子でした。日
曜日で晴天とあって、田園地帯では田植えに余念がありません。こういう日は家族総出らしく、通常は野良仕事などに係わ
っていそうにない若い男女の姿が目について、一目でそれと分かる姿であるのが面白いところです。普段人影が少ない原
村の田圃地帯では、段々状に広がった裾野に、これほどの人影や駐車中のクルマを見るのも滅多にありません。邪魔に
ならぬよう、遠慮がちに傍を通り抜けて静かな場所に行くと、畑地や土手を無数のタンポポが覆っていました。万物が萌え
盛る春、八ヶ岳のみはいよいよ赤みがかった本来の色を露わにして、ゆったり横たわっています。ここにやって来ると、気
分までゆったりと広がります。とはいえ、「土手越しの八ヶ岳」は、立ったままでしか得られないアングルで、土手にスケッチ
ブックを置いたまま背伸びしたり中腰になったりしつつ描いたので、とてもゆったり気分ではありませんでしたが・・。紙の上
に、虫やらタンポポの種やらが飛んできて、まさに春のフィールドさながらでした。「タンポポ畑にて」の方は、タンポポの群
生地の中に陣取って、ゆったりと描いた一作です。もう一作、「春を映す」は、長坂の中央道近く、まだ田植え前の水田を見
つけて描いたものです。


○ 新緑は束の間〜絵の具の話など(5月14日記)
 
 サクラが終わると、あれよあれよという間に新緑が濃くなっていきます。GW中に三日間だけ家を空けて家に帰ってきた
ら、その三日間だけで黄緑色が目を射るようになっているので驚きました。本当に新緑の季節は韋駄天のように通り過ぎ
てしまうもので、紅葉の季節もそうですが、先を急がず、もう少しゆっくりと時が経って欲しいと何時も思うのがこの季節。山
麓では田圃に水が張られ、昨日あたりから田植えが始まりました。私も接客や何やで忙しかったGWが終わってから、再び
取材に、スケッチにと精を出し始めています。ただ、このところ天候が崩れ気味だったので、晴れ間を見ては素早く行動し
なければなりません。あの水田の風景も、タイミングを見計らわないと田植えが始まってしまい、これはこれでいいのです
が、水面に映る残雪の山を描く機会を逸してしまいます。なかなか忙しいのです・・この時期は。

 使う絵の具も俄にグリーンやイエロー系が増えてきました。この樹木の緑色というものは、絵の具の色数こそたくさんある
ものの、決して単色の「これ」という色で表せないものです。樹木に限らず山肌でも何でもそうなのですが、特に木々の持っ
ているそれぞれの色合いは微妙に異なって決して同じではないので、そこが難しくまた面白いところでもあります。
 話はちょっと逸れますが、かつて、欧州系の絵の具で24色入りだとか、何色入りかの絵の具を買うと何時も感じたことが
あって、それは茶系の種類が必要以上に多く、その割には緑系が少ないということでした。おそらくそれは・・と想像を膨ら
ませると、いわゆる石の文化と木の文化の違いとか、或いはそれを形づくる自然環境の違いにあるようにも思えてきます。
つまり、欧州の場合は、割合ドライでロッキー、森も単調ですが、日本の場合は、ウエットで風景に頻繁に登場する森や木
立が欧州と較べると段違いに多様だという事情がありそうです。それが風景画の色合いやひいては絵の具の開発という面
で反映されているのかもしれない・・・と、思えるのです。いずれにしても、水彩画は自由かつ手軽に色を混ぜ合わせられる
ところが面白く、また奥が深いわけで、私は通常、三色も四色も混ぜ合わせたり、水で薄めたりと、いろいろ試色(こういう
言葉、あったか?)してかなりパレットを汚してしまう方です。それで、結局使う絵の具の色はさほど多くはなく、従って私の
場合、先ほどの絵の具の色数を多くしてもらう必要性は毛頭ないのですが、日本には日本ならではの風景に相応しい絵の
具の開発があって然るべきだという想いはあります。

 スケッチ計5点を載せました→ 山麓絵画館 →山麓スケッチ館。いずれも新録がテーマです。いずれも、ねてより目を
付けていた小淵沢の南に下った辺りと野辺山の外れの渓流に、タイミングを見計らっては出向いて描いたものです。


○春があちこちに(4月14日記)

 ここ数日、晴れ間が殆どなくて山も見えないのですが、すっかり暖かくなって大気にも大地にも春が充満し始めたようで
す。本日現在、私の住んでいる千b近辺では、漸くサクラの開花を迎えるところ。少し下って中央高速の南に出ると、そこ
を境にしてサクラの気分も違ってくるものか、遠くからでも柔らかなピンクの固まりが、まだ冬色の樹林を背景にポッカリと
浮かび上がっているのが見えます。ここいらでもウメの開花が遅かったようで、ウメとサクラは同時進行で咲き誇りそうな様
子です。それに、薄紫のミツバツツジも、コブシも咲き始めました。
 小淵沢は南北に細長く、生活領域をとっても高低差が500bくらいあるので、北端と南端では季節の進行にかなりのズ
レがあるようです。昨日は、その一番低い所を流れる釜無川の岸辺に行ってみると、ヤナギの新緑が黄緑色のこれも雲の
ような群れをなしています。新緑一番乗りです。ここ二三日来の雨のせいもあって、水量は豊富で流れも豊富、流域には春
が先行して躍動しているようでした→山麓スケッチ館
 フキノトウやツクシは籐が立ってきましたが、山菜はこれからが本番。当家では、今年収穫したフキノトウと、これは伊那
まで遠征して収穫したアサツキを庭に植え、来年の春到来を我が家の庭で確認しようと目論んでいます。土も緩み始め、畑
や田圃の土興しが始まっています。もう一月もすると田圃に水が張られて、山々を映す鏡となってくれるのが楽しみです。ケ
ヤキやコナラはまだ枯れ木のように見えますが、芽吹きを控えて遠目にも樹冠の膨らみが春を感じさせます。そんな春の
気配をスケッチしてみました→山麓スケッチ館


○動き出す春(3月19日記)

 「春がやってくる!」という感覚は、誰でもわくわくするものです。私とて同じですが、「冬が終わってしまう」ことにやや寂し
い思いを禁じ得ないところもあるのです。このフィールドノートでも折に触れて書いしたように、この冬は本当にカラカラのま
まで終わろうとしています。16日には、太平洋側を通過した低気圧による激しい風雨に見舞われましたが、この時は、さす
がに2千メートルを超えた山では雪だったようで、次の日にはいつもより白く輝く南アルプスを目にしました。しかし、もう後
戻りはできないような春の兆しが大気をも覆い始めているようで、これからは雪解けの速度の方が早くなる一方となるので
しょう。季節の変わり目は、自然だけではありません。人々の行動にも春がうごめき始めた感があり、我が家でも遠路訪れ
る人があったり、思わぬ来客があったりで、ちょっと華やぎを添えてくれました。当家でも、そろそろフキノトウを探しに行か
ねば、と腰が浮ついてきた節もあり、山麓で初めて迎える春は、やはり心ときめくものがあります。
 ここのところ野暮用に追われていた私は、冬の作品作りに追い込みをかけねばなるまいと思って、再び制作にかかり始
めました。そのうちの一点が冬木立です。以前このノートにも、絵にしてみたいと書いたモチーフで、降雪後の原村で出
会った光景です。外に出れば、雪山のスケッチに余念がありません。春になると大気がかすみ出し、山の雪もどんどん消え
ていくでしょうから、その前にスケッチしておこうという気もあります。相変わらず南アルプスが多いのですが、山麓スケッチ
館に掲載しました→山麓スケッチ館)


○早くも三寒四温が(2月20日記)

 2月に入ってから身震いのする寒〜い日は、これまで僅か二、三日だけだったように思います。春めいた陽気とか、初夏
のような日もありました。三寒四温というよりも、二寒三温二暑といっていいくらいの変わった気候が続きます。やはりこれ
も異常気象の一環なのでしょうか。今でも私の友人たちは殆ど例外なく、電話やメールで「雪はどうですか」と訊いてきます
が、ここ南麓では相変わらず地上に雪のない冬が続いています。
 そんな中、これは雨が続いた2月の初めでしたが、ここが雨なら山は雪かと思って、原村まで出かけたことがありました。
案の定、山麓を西側に回り込んで走るほどに、道が雪で白くなり、久しぶりの白銀の世界です。広い段丘地帯に出ると、遙
か西の空に北アルプスが、これは真っ白な装いで浮かび上がっています。こういう神々しい姿を見ると私は人一倍感動す
るタイプなので、しばし見とれてしまいました。農道を走ると、クルマのわだちがシュプールとなって残ります。そこで白さを増
した八ヶ岳をスケッチしたものが、山麓スケッチ館に展示してある一点です(→山麓スケッチ館)
霧氷状態の木立の中で見かけた二羽の野鳥。お腹が朱色で、これは多分ヤマガラでしょうか。初心者の私には、まだ自信
を持って同定できません。双眼鏡を取り出したときは、遠くの木立の中に飛んでいってしまいました。ここで見た木立を絵に
しようと、いま作画にかかっているところです。
・・・・とここまで書いてサーバーにアップしようと窓の外に目を向けると、しきりと雪が降り始めています。お昼前後の一時期
に降雪の予報があったのですが、余り当てにしてはいませんでした。かなりの湿雪で、首都圏で見る春先の雪のように大
粒です。山肌が相当雪解けの跡を晒していたので、これでまた、白い装いに戻ってくれていればいいのですが・・。


○続く南麓日和〜川上村へ (1月26日記)

 相変わらずいい天気です。先週末首都圏で雪が降ったときも、こちらはほんの申し訳程度にぱらついて終わりました。雪
景色を求めていた私にはガックリ。山の雪も一向に増えない様子です。豪雪地帯の方には申し訳ありませんが、私は、本
当に雪を待ちわびています。
 気を取り直して、久しぶりに川上村に行って来ました。野辺山も川上村も例年なら雪が積もり、路面も凍結している季節な
のですが、写真をご覧下さい。殆どカラカラ状態です。ただ、寒さだけはさすがこの辺りのことで、午前10時をまわっている
のに零下7度! 外に出るとカメラを持つ手が痛み、目からはやたらと涙が出て眼鏡に凍り付きます。カラマツの霧氷でも
絵にできればと期待していたのですが、これもダメでした。もちろん雪や水っ気があれば、たちどころに霧氷状態となるそう
なので、次回の楽しみにとっておきます。
 牧歌的な畑のはるか向こうに、浅間山が姿を現していました(写真)。ここは信州なのだと改めて思います。大地を割って
深く切れ込んだ千曲川支流の谷間に降りると、細った流れが岩を噛んで小さなつららを作っています。ここまで来ると川辺
の林には雪がついていて、野ウサギだかテンだかの足跡がついています。灌木に残っている萎れた赤い実は何なのか、
枯れた岸辺の木々が何なのか・・・春先にまた是非訪れたいフィールドを見つけました。

広大な畑の先に、浅間山が見えました。
この山を見るのは久しぶりで、嬉しくなっ
て撮影。チャーミングな納屋や農機を入
れ、望遠にズームして撮ってみました。




○南麓はカラカラ天気 (1月14日記)

 日本海側は豪雪で大変ですが、ここ八ヶ岳南麓では、昨年12月始めの初雪以来、殆ど雪らしい雪は降っていません。年
賀状でも多くの人から「そちらも雪の中でしょうか?」と訊かれたのですが、前回傘を使ったのはいつだったか思い出せさに
くらいです。地面もカラカラに乾いていて、スタッドレスタイヤもなかなか活躍の機会がないのです。それはそれでいいことな
のですが、雪景色を狙っている私にはちょっと期待外れだし、我が家の庭はまだ何も手を付けていない土の剥き出し状態
なので、埃よけにお湿りが欲しいくらいです。
 何故降らないかというと、どうもこの辺りは気候的には太平洋側気候に属するようで、その場合、雪が降るとすれば太平
洋南岸沿いに北上する低気圧が誘因となりますが、南アルプスという大山塊に阻まれてここまで雪が届くことが少ないよう
です。一方、日本海側に大雪をもたらす雪雲は、北アルプスとか上中越の山々に遮られてそこで雪を降らせ、一部が八ヶ
岳までやってきても山の北側で雪を降らせてしまいますから、南側ではたまに迷い雲が降りそびれた雪を運んでくるくらい
なのでしょう。いずれにしても、降雪が少なく、これが日本一日照量の多い所と言われる所以なのだと思います。何だか天
気解説のようになってしまいましたが、雪と寒さは必ずしも比例しないことは、こちらに来て身に染みて分かりました。天気
がいい日の夜などは、放射冷却がきつくて、日暮れ前でも氷点下3,4度になるのはごく日常的です。
 私は、冬の好天の日々を「南麓日和」と勝手に名付けて、そんな日和には機会あるごとに取材を続けています。風が強い
日はクルマの外に出るのもためらわれますが、風さえ穏やかなら戸外は冬でも気持ちがよく、山を眺めたり、最近は野鳥
の姿を捉えようと、友人が贈ってくれた双眼鏡を常に携帯し、耳をそばだて目をきょろつかせています。こちらの収穫はま
だ乏しいのですが、絵のモチーフはもうたくさん貯まったので、そろそろ本格的な制作にかからんとしているところです。
近々、新しいコーナーで新作を披露していける見通しなので、どうぞご期待下さい。
 よく晴れわたった南麓日和の朝、クルマを止めて歩くと
 例によって甲斐駒がきれいに見えます。手前の畑は土
 も乾いてサラサラです。


 ↑ ここから上が2006年
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以下は2005年のフィールドノートです。


○甲斐駒ヶ岳 (12月31日記)

 八ヶ岳南麓に暮らして、いつも一番目にする山は、八ヶ岳ではなく甲斐駒ヶ岳、通称「甲斐駒」なのです。山麓は南に緩く
傾斜し、そこに建つ家々は南向き・・・だから、目を上げれば、対岸に屏風のように連なる南アルプスがあり、その中で抜き
んでて特異な山容を誇るの甲斐駒ヶ岳が、否応なしに目に飛び込んでくるわけです。否応ナシに、と書きましたが、私はも
ちろんこの山を見るのが大好き。甲斐駒にかかる雲の状態、光の具合などによって、私たちはおよその時間を知り、天気
の様子を窺うことができます。そして見るたびに、峻厳で美しいこの山は、絵や写真の対象としてどうしても私たちの目を奪
ってしまう個性の持ち主です。
 空が澄んでいる冬場は特にその全貌を現すことの多いこの甲斐駒、実はとても複雑な山容をしていて、いく筋もの尾根と
沢筋が複雑に絡み合って稜線や頂上に這い上がっています。ですから、この山を仔細にスケッチし始めると時間が足りなく
なることが多く、彩色を諦めてしまうことがあります。私たちが眺めているのは甲斐駒の北斜面で、したがって、陽が当たる
のは東側の稜線を中心にせいぜい昼頃まで。午後になると、北壁はブルーグレーのモノトーンに変わり、やがて日没に向
けてシルエットを濃くしていきます。じっくり描いていると、たちまち山の様相が変わってしまうという具合です。
 12月に入って、甲斐駒は沢筋の雪が一段と白くなってきました。そんなある日、小淵沢の我が家ではマイナス10度まで
下がった早朝に、甲斐駒がいつも以上にくっきりと見えるので、早速クルマでお目当てのスポットに駆けつけました。氷結し
た溜池越しに北岳や甲斐駒が輝いて見える素晴らしい朝でした。凍てつく中でしたが外に出なければいいアングルが取れ
なかったので、外に出て急いでスケッチし、いざ彩色という段になると、何とペットボトルの水が凍り付いて一滴も出てきませ
ん。これでは水彩にならず、止むなくクレパスで代用しましたが、とても印象とはかけ離れた一作になってしまいました。実
は、クルマの中にスケッチ道具を入れっぱなしにしておいたのが凍った原因のようで、以後、夜はカメラも絵の道具も家の
中にしまうことにしてます。この日は描いている途中、何度もグァーンという池の氷の割れる音を耳にしました。
 甲斐駒ついでに、デッサンのみで終わったものや、クレパス代用の一作も含め、新装なった「山麓スケッチ館」に展示しま
す。→山麓スケッチ館


○いきなり冬本番! (12月7日記)

 引っ越して2週間、まだ生活環境をいろいろと整えつつある4日の日曜日、午後から雪が降り始めました。それは夕方か
ら一晩中続いて翌朝は銀世界! 今シーズンの初雪で、約15pの降雪でした。慌てて近所のスタンドに行き、取り寄せて
おいたスタッドレスタイヤを装着してきました。下の写真は、降雪中とその翌朝、茅の原越しに撮った我が家です。
 気温はここ数日急速に下がっていたのですが、本未明、我が家のテラスに備えた寒暖計はマイナス5度を示していまし
た。いきなり冬到来のパンチを食らった感じです。尤も、みんなが「冬は大変だから」と言いますが、私は冬の到来を期待し
ていた節もあって、元来雪が好きだし、ピーンと凍てつく大気の中で雪の山を眺めるのを心待ちにしていたので、結構興奮
してあちこちとクルマを駆って走り回りました。外でのスケッチには寒すぎるので、この日は撮影専門。狙いを定めてあるス
ポットを点検するがのごとくあちこちと周り、写真を撮りまくります。どうも、こういうことをやっている人は他には見かけぬよ
うで、私はかなり場違いに映ったに違いありません。大概の人には迷惑な雪なのでしょうが、私には実に楽しい雪でした。
 それから二日後に、日野春付近にある八ヶ岳を眺める好スポットに出かけて、山をスケッチしました。この辺りの地面は
既に雪が解けていましたが、八ヶ岳は午後の陽を受けて鈍い銀色を放っていました、。(→山麓スケッチ館)



○新居へ (11月末日記)

 暫くフィールドノートを更新していませんでしたが、この間、引っ越しがあって、再びてんやわんやの状態であったためで
す。漸く小淵沢の新居に移り、ここでの定住生活が始まりました。とはいえ、一時預けてしていた引っ越し荷物が、ど〜んと
新居に運び込まれ、その片付けに未だ手を焼いている状態なので、器だけは新品で気持ちがいいのに、中身は昨日の残
り物といった感じで、ちょっとちぐはぐな雰囲気であるのは否めません。こうしてPCに向かっている私の背後には、まだ段ボ
ールが山をなしています。
 いろいろと雑事に追われることばかりだった私たちの移住プロジェクトが、ここで漸く一段落したわけで、そのための安堵
感からか、何をやるにも気合いが入らないといった精神状態が続いてます。まあ、気長に少しずつ。これからは、追われる
立場から追う立場へ・・・もちろん、私の場合は、新しいステージでのいい作品の追求ということですが・・・そんな姿勢でやっ
ていきたいと思っています。


○忙しい朝(11月4日記)

  家の周りの林も随分と黄色味を増して明るくなってきました。こんな季節ですから、朝起きて窓の外が明るいと家を飛び
出すことにしてます。クルマにはスケッチの道具一切とカメラを積んだままにしてあるので、取りあえず出かけるのです。朝
は空気がクリアーで山の輪郭も陰影もくっきりと見えますが、陽が高くなると決まって刷毛で霞を引いたような大気となって、
山々の臨場感が薄らいでしまいます。だから、好天の朝はのんびりしていられません。本日もそんな秋晴れの朝だったの
で、八ヶ岳が正面から一番よく見える八ヶ岳高原大橋の袂に駆けつけました。これまで何度も足を運んでいるのですが、全
山がクリアーに見えることは結構稀なのです。早速スケッチ(→山麓スケッチ館)。またたく間に光線の具合が変わってし
まうので、急いで筆を動かしました。どうもしかし、見渡す対岸の黄葉は依然としてくすんだ色合いで、スケッチでは願望も
入れて少し派手目な色合いにしてみました。寒さも和らいだ朝だったので、戸外でのスケッチには大助かりでした。


○秋の原村で(11月2日記)

 八ヶ岳山麓では、1000b前後の所で黄葉の盛りとなってきました。この山麓には自生のカエデ類が少なく、カラマツやナ
ラ類、シラカバなど、黄色に染まる木々が多いため、敢えて「黄葉」と書きます。その黄葉は、今年は10日から2週間ほど
遅れてやってきた上に、ダラダラと寒くなったせいか、今ひとつ鮮やかさに欠けます。地元の人もそう言ってますし、どうやら
温暖化の影響もあるらしく、ここのところ、かつて感動したほどの黄葉を味わっていないような気もするのです。とはいえ、山
麓をぐるっと長野県側に回り込んで、富士見町や原村の方面に行くと、がらっと様相が変わって、木々の色づきが鮮やかで
す。鉢巻道路を走るとぐんぐん高度も上がり、気温も寒くなるせいでしょう。なので、ここ二三日は、天気がいいと原村にや
ってきては、せっせとスケッチをしている次第です。
 見上げる八ヶ岳の斜面は、既にカラマツの黄葉で山全体が山吹色に染まっています。明け方は零度近かったのに、陽が
昇って彩りの仲に佇んでいると、ほどよく暖かでほどよく冷たく、要するにとてもいい気持ちとなります。そんな中でのスケッ
チ2点を載せます(→山麓スケッチ館)
 ひとつは、燃えるような黄色に色付いたコナラの大きな大木です。誰かの別荘の前を通りかかって、あまりにも鮮やかな
ので思わずクルマの停め、運転席からスケッチしてみました。
 もう一つは、八ヶ岳中央農業大学の構内に入り込んで、放牧された牛を横目に見ながら、正面に屏風のように連なる八ヶ
岳を描いてみました。一際高い赤岳が、左に横岳の岸壁、右に権現岳への稜線を従えて聳えています。とても広々として
開放的構内で、ここではつい先日秋の収穫祭があって、野菜や乾燥ベリーなどを買い求めました。
 天気が良かったこの日、大学の外れから、北アルプスが見えまし
た!穂高連峰から大キレットを挟んで槍ヶ岳まで、峨峨とした山稜が
中空に浮かんでいるのです。さすが北アルプス、既に雪をいただいて
います。右は、思わず撮った写真です。
 
 “天空に 雪の峰あり 伊那路かな”

俳句をたしなむ友人が伊那谷で詠んだ句を思い出しました。
ここは原村ですが、まさにそんな感じでした。
 いつも見ている南アルプスで雪を付けているのは北岳ですが、まだ
沢筋が白いだけです。

○八ヶ岳は好天が続いています。(10月23日)

 昨晩、この秋初めて石油ストーブを点火しました。朝晩はかなり冷え込みます。それでも、陽が昇るとぽかぽかと暖かく、
朝起きてスケッチをしていると帽子が必要になるほどです。今朝は朝のそんな陽射しを受けた八ヶ岳を描いてみました(→
山麓スケッチ館)。赤岳だけは雲に見え隠れです。
 川俣渓谷の紅葉スポット、赤沢大橋まで出かけてみました。ここは標高1450bほど、ちょうど紅葉の見頃なのですが、
どうも今ひとつ鮮やかさに欠け、全体的にくすんだ感じです。日中の温かさのせいか、木々も戸惑っているものと見え、今年
はこんな具合で冬を迎えてしまいそうです。とはいえ、ダケカンバの黄葉と白い幹がアクセントを添える渓谷の陰影と、その
先に続く主峰赤岳への黄葉の斜面は、なかなか見事です。スケッチはせずに、写真だけ撮りまくりました。もう少し間をおい
て、また行ってみる積もりです。


○漸く秋が深まり始めました。(10月22日記)
 
 山麓では遅い稲の刈り入れが終わり、いよいよ秋の気配濃厚です。
今年は10月に入っても雨が多く、スッキリと秋晴れの日が少ないようですが、ここに三日冷え込んで、木々の紅葉も思い出
したかのように進み始めました。仮住まいのある泉郷の森も、早くから色付いていたヤマザクラが赤茶の濃淡のシックな色
合いとなり、シラカバに加えて、ミズキが黄葉を始め、林床ではダンコウバイのレモンイエローが目立つようになりました。し
かし、一番遅くやってくるカラマツの黄葉にはまだまだかなりの日数を要するようです。林を歩くと、黄緑色のイガをかぶった
ヤマグリは至る所に落ちていて、その気になるとたくさん収穫できます。先日これを煮て食したところ、ホカホカとした素朴な
甘さがなかなかのものでした。
 夕方近く、いつものようにスケッチのいいスポットを探しながらクルマを走らせていると、小淵沢インター近くの開けた場所
で、薄暮の中、南アルプスがいい具合に雲と溶けあっています。即スケッチ。みるみるうちに残照も僅かとなり、気がつくと
西の空が夕焼けに染まり出しています。急いで色を乗せ、キリのいいところでスケッチを打ち切りました(→山麓スケッチ
館)。この場所は気に入ったので、またじっくり描いてみたいと思ってます。



○やってきました!八ヶ岳山麓へ(05年9月23日記)

◇引っ越し〜山麓生活へ
 冒頭のご挨拶で触れましたが、横浜の残務処理を終え、8月5日からこちらに住み着いております。引っ越しには、ほと
ほと疲れ果てました。この歳(63歳)にして、生活環境を一新するというのは、やっぱり並大抵のことではなかった・・・これ
が実感ですが、ともかく八ヶ岳山麓の新住民として歩き出した次第です。
 現在、荷物の大半を工務店の倉庫に収納してあるとはいえ、相当量の荷物とともにこの小さな仮住まい先に運び込んだ
ので、未だに段ボールや床の上に積まれた諸々のモノたちの合間を縫って寝起きをしてます。水彩画のブロック紙なども、
ほとんど倉庫行きとなってしまったので、ただいま紙不足状態を来してます。

 ともかくも始まった高原生活、やはり一番特記すべきは、涼しい夏を送れたことでしょうか。
標高千bといえば、軽井沢や富士五湖とほぼ同じ。山梨県の天気予報を見ていると、河口湖とこの辺りが大体同じ気温で
す。そして、新しい環境に右往左往しているうちに、大気は秋のそれに入れ替わったようです。これを書いている今は、窓を
開けておくと寒く、長袖の重ね着をしてます。クルマで枝道にはいると、タイヤからプチプチと音が聞こえます。クルミやクリ
の実を踏んでいるのです。蝉の声が去って、小鳥の声が聞こえます。北海道では大雪山が初雪と紅葉とのコントラストが鮮
やかだそうですが、八ヶ岳山麓はそろそろ高いところで紅葉が始まったところです。我が家の周辺では、先陣を切ってサク
ラの葉が先ず色付き、ナナカマドやヤマウルシの紅葉が部分的に見られるようになってます。さすがに盛夏の頃は炎天下
のスケッチが大変でしたが、これからは屋外の取材が楽しみ。空気が乾燥しているせいか、絵の具の乗りも少し違うようで
す。

 夏の間は霞んでいつも雲に隠れていた甲斐駒や北岳、八ヶ岳では赤岳の頂が、その姿を見せるようになりました。
 私の住む南麓から西側に回り込むと、実に広々とした緩やかな裾野に、借り入れを控えた黄金色の田圃が幾重にも段丘
を成しています。その背後に八ヶ岳連峰が壁のように横たわっている風景をスケッチしました(→山麓スケッチ館)
 我が家のある南麓からは、正面に南アルプスの連なりが一望でき、その中心には、あの特有の姿をした甲斐駒がどんと
居座って、いつも主役の座を誇示しています。この先、どれほどその姿を目にすることか・・・とにかく今は、やっぱりそこに
目が行って、その見え具合で天気を占ったりしてしまいます。白さを増したススキの穂と甲斐駒の組合せをスケッチしてみ
ました→山麓スケッチ館)

 これから、山麓の四季の光景を、ずっとお届けしていきたいと思ってますので、時折覗いてみて下さい。


○作者のボヤキ(05年5月26日・・文章のページ冒頭より移設)

 ちょっとお付き合いのほどを。
ボヤキ・・その1
 私こと栗原成和は、一念発起して居を八ヶ岳山麓に移すべく、目下奮闘中です。もっと絵に専心したい、もっといい作品を
つくりたい、その一心で企てたことです。
 現在のアトリエは書斎との兼用で、かなり手狭です。そこで、広いアトリエが造れて、かねてより憧れていた八ヶ岳山麓へ
の移住を決意し、小淵沢に土地だけ確保をしたのですが、恥ずかしながら、そこから先は、いま住んでいる横浜の家を売ら
ないと、進まない状況なのです。現在、不動産会社を通して買い主を捜しています。自分でいうのも憚れるのですが、注文
建築によるとてもいい家なのです。私の絵にも出てくる自然公園が目の前です。もしどなたかご興味のある方がおられまし
たら、是非一報いただければ、詳細情報をお伝えできます。(追記です → お陰様で家の売却ができました。移住の段取
りが一歩前進です!)
 宣伝になってしまいましたが、引っ越しにともなって、このHPも引っ越すことになります。もちろん、その節は当HP上でご
案内差し上げるつもりです。

ボヤキ・・その2
 そんなことで奔走中の5月のある日、同居犬が亡くなりました。名を「みるく」といって、子犬のときに前の公園で捨てられ
ていたのを妻が拾ってきて以来、12年半一緒に暮らしてきた愛犬です。血液がつくれなくなり、酸欠状態となって死に至る
という難病でした。医者から一両日と宣告を受けてから、寝たっきりのほとんど水だけしか喉を通らない状態で、2週間生き
続けました。途中、苦しみから解放してやりたいと、安楽死をさせることも考えましたが、今となっては、それをせずにとこと
ん彼女の傍で介護してあげてよかった、とつくづく思ってます。2週間、自分では買い主を呼ぶ声しか出せなかったものの、
みるくは、懸命に生き続ける姿を私たちに見せてくれたのですから・・・。
生き物の死とは、悲しいものです。私どもには子供がいないせいもあって、余計応えました。これも、なかなか絵筆をとれな
い原因の一つです。

 何でこんなことを書くのか?・・と言えば、せっかくこのHPを訪れて下さるのに、新作の登場がはかばかしくないじゃない
か!という声が聞こえてきそうなので、せめてものお詫びと言い訳のためであります。と同時に、今しばらく辛抱していただ
けるなら、自信を持ってお見せできる作品をきっと出展できることを、皆さまにお伝えしたいからでもあります。

 お付き合い下さり、ありがとうございました。
引き続きご愛顧願えれば、これに優る幸せはありません。

○真夏の会津・只見のこと(05年2月)

 昨秋以来、諸事情があり気の緩みも手伝って、しばらくフィールドから遠のいたままでした。そこで、書き残していた真夏
の体験を記します。今更過去を引っ張り出すようでいささか気が引けるのですが、真冬に真夏の情景を思い浮かべるのも
一興・・・と勝手に言い訳をさせてもらう次第です。
 猛暑の続いた8月6〜9日、会津若松から只見町へ。会津若松では、かんしょ踊りという夏の風物に参加する一団に合
流。実は、私としては前夜の練習と宴会に参加しただけで、素朴な節と所作を肴に大いに盛り上がった夜を過ごすに留め、
その後、夏の題材をたくさん仕入れるべく、今やすっかり私の絵のフィールドとなった只見に足を伸ばしました。
 それにしても、内陸の会津地方は予期した以上の暑さ!! 郊外へ出て阿賀野川の広い堤に立っても、陽射しは晴天の
空を貫いて容赦なく降り注ぎ、山並みの上には分厚い入道雲が幾重にもエネルギッシュに湧き上っています。市街の方向
を振り返ると、そんな入道雲を従えた磐梯山の山容が、夏の陽を受けて佇んでいました。炎天下の外でスケッチする勇気
がなかったので、クルマの中からエアコンを入れっぱなしで、これをスケッチ→スケッチ館
 そこから南下して南会津の山中にかかると、峠道は雲の中、一挙に外気温が10度ほど下がってきました。やれアリガタ
ヤ!と思ったら今度は雷雨。ここでもクルマの中に留まってやり過ごします。雨が上がり幾山か越えて只見川沿いの国道
に出ると、何とも幻想的な川の光景が続いて目を楽しませてくれました。猛暑の後のクールダウンから、今度は再び陽射し
を得て温められた川面から一斉に霧が湧き上がっているのです。それは濃密な白い層となって川を覆いつくし、手前の岸
辺に浮かぶ釣り船さえ薄墨のシルエットになっています。只見町に近づく頃には、そのヴェールも薄れて、折からの日没と
相俟ってますます幻想的に・・・。こうなるとスケッチもままならず、シャッターを切りまくるだけでした。
 只見の宿は、一件の農家。ここは写真家の猪又かじ子さんが借り上げて改装しアトリエ兼取材のベースに使っている所
で、町外れの布沢という集落の中にあります。かじ子さんとは友人を通して知り合い、すっかり懇意にさせてもらっている関
係上、私もこれまで何度も只見を訪れてはこの地域の豊かな自然を絵の題材にしてきました。一人ここで夜を明かし、明け
て早朝かつて知ったるポイントにクルマを走らせます。朝日が射し込む黒谷川でスケッチ、とって返して今度は恵みの森と
いうブナの森へ。そこで青々と葉を茂らせたブナの大木に再会してこれをスケッチ。→ともにスケッチ館に展示
 ジリジリとした陽射しと滴るような緑を浴びた夏の旅でした。


○再々、谷川岳山麓へ

 10月27−28日、昨年秋以来、3度目の谷川山麓の取材に行ってきました。好天と冷え込みがあるとの天気予報だった
ので、これを逃すと冠雪と紅葉の谷川岳はなかなか見られないと思い、例によって前夜出発、赤城SAで車中泊ということ
にしました。関越道は月夜野ICから先は地震の後で通行止め。SAではボランティアらしき若者が7−8名、やはり車中泊
をしていました。夜中の12時を回って既に気温は1度。被災地ではクルマの中で不自由な思いをしているだろうに、私は何
を好んで車中泊を、という思いも過ぎりますが、私はいつも寝袋とエア枕二つ、それに日よけのシェイドがあれば、結構快
適に一夜を明かすことができます。尤もたかだか1,2泊のことだからでしょうが。
 赤城SAは、北側から谷川岳連峰を一望できます。明けて28日は予報通り快晴、おまけに谷川連峰は冠雪しています!
やっぱりドンピシャのタイミングだった!急いで出立、月夜野ICを降り、かつて狙い定めていたスポットへと向かいました。
僅かの間に、朝の陽はたちまち高くなって山の陰影がどんどん薄れていきます。急いでスケッチし→スケッッチ館、写真
を撮ってからまた利根川沿いの高台を行ったり来たり。その後、水上から湯桧曽川を超えてロープウエイの乗り場まで来る
と、そこから先、一の倉方面は通行止めとなっています。駐車場の係りの人に訊くと、地震による崩落があって徒歩でも入
れないとのこと。止むなくロープウエイに乗ることにし、普段はしない観光旅行をやってしまいました。しかし、やっぱり、案の
定・・・終点に着くと、そこから先も有料リフト、休む場所は土産物屋兼レストラン。嫌気がさして早速山麓駅に引き返し、そ
の後行きがけに目星を付けておいた湯桧曽川上流に入っていくと、この一帯が静かで一番秋らしい風情です。河原に降り
てコンビニおにぎりの昼食とスケッチ→スケッチ館。余りにも人気がないので、あるいはツキノワグマでも現れるのでは、
と心配もしましたが、湯桧曽川の水音だけが晴天の秋空に吸い込まれていくようで何とも心地よく、時の経つのも忘れま
す。陽も大分中天から傾く頃、その場を後にして山を降り、例の関越道135キロポスト辺りの農道へ。朝見た冠雪は既に
溶けて、谷川岳はもとの岩陵を晒しています。その暮色を帯び始めた光景をスケッチ→スケッチ館
 引き上げ時間の調整がてら、付近の玉原高原に足を伸ばしてみました。もう日没との競争で高原への坂道をひた走る
と、意外と広々とした玉原高原に辿り着きました。ここは関東最大のブナ林だそうで、残照に赤く染まったブナ林に、白い幹
が浮き上がって幻想的です。アッと言う間に日没を迎え、西の山々は既にシルエットに。次回はゆっくりと来たい、特にここ
はスキー場もあるくらいなので早春のアクセスもいい筈です。そう思いながら高原を後にしました。
 今年は紅葉が遅れていて貧相です。先日八尾の帰りで安房峠のトンネルを通ったときも感じたのですが、やはり猛暑と相
次ぐ台風の影響でしょうか、色合いが冴えないし、高度7〜800b付近の本来紅葉のピークと思われる辺りでも、色付く前
に枯れ出している木々をたくさん見かけました。クマも樹木も異常気象で不自由を来したんですね。


○八尾町に滞在して(24/Oct更新)

 久しぶりのフィールドノートです。実は、初夏の谷川岳山麓以来、遠出をしていませんでした。6月にどうしても年内に個展
をしたいと思い立って会場探しを始め、決めてから追加の創作と準備にかかり、そのうちエントリーしていた富山県八尾町
の「坂のまちアートinやつお」への出展が決まり・・・で、9月末からの個展開催から引き続いて10月8日からの4日間の八
尾町滞在となって、あれこれずっと忙殺されていました。一連の行事を終えて、フォローアップやら片付けも終えて、漸くこ
れを書く余裕が持てるようになったという次第です。・・・こんな風に書くと、如何にも売れっ子の作家のように思うでしょう
が、こんなことは1年に一度あるかないか、普段は至ってブラブラとしているんですがね〜。

  八尾町での体験を書きます。
  静かで落ち着いた佇まいの町・・おわら以外では初めてこの町にやってきて、最初に感じた印象がこれでした。町内の距
離感と空き空き感といいますか、この感覚は、人混みの中、どこからともなく聞こえてくるおわら節を耳にしながら夢中で歩
き回ったことしかない人達が覚える共通した落差であると言えるでしょう。それほど、この旧市街の町並みは細く長く続いて
いたとは驚きで、特に私の会場となった市街地の外れに近い下新町からイベントの中心部である上新町の方までの坂を上
って歩くと、やけに遠く感じるのでした。着いて搬入も済ませた翌朝、散歩すると町の人達が会釈を交わしてくれます。それ
だけで都会住まいの私にとっては新鮮で嬉しくなります。そんな町で5日間を滞在、西町にある宮田旅館と鏡町の北吉に2
泊づつしました。
「工芸まこと」さんは、私が出展会場に使わせてもらった店舗です(写真)。現代風
民家の装いとセンス溢れる空間、そして並んでいる民芸陶器の品々も、それを造り経
営されているまことさんご夫妻の人柄を偲ばせるものです。中心部から外れていて
人通りが少ない点が唯一難点でしたが、それ以上にこの素敵な空間(これが写真の
ように私の水彩画とも不思議と調和してました)と、奥様のさりげないお気遣も清々しく、
お陰様で期間中すっかりくつろいで過ごすことができました。
 「坂のまちアートinやつお」というイベントについて改めて触れますと、これは八尾町の旧市街地に点在する町屋を中心にし
て会場に使い、一会場一作家による個展の集積のようなユニークなイベントです。今年が9回目で、町全体がギャラリーの
ような様相となるので、来場者は散策がてら作品を覗いて歩けます。来てみて分かったことは、出展者の大半が富山市近
郊の人達であり、私のように横浜くんだりからやってきた参加者はごく少なかったのは意外でした。来場者の大半も八尾町
や近郊の人達であり、おわらという全国区の知名度を持つ八尾町の印象からすると、まだ控えめでその分和気あいあいと
やっているという感じを受けました。その点、新参者の私にはやや戸惑いもありましたが、日を重ねるうちに町の人達、出
展者仲間との親近感が増して、そんな雰囲気を楽しむようになりました。裏を返せば、このイベントはそれだけ地方区から
全国区へと、これから発展する可能性を秘めていると言えるのだと思います。
 確かに、この町にはアートとか文化といった香りがよく似合っています。そしてそれは、やはりおわらとか曳山の伝統が住
民たちの血の中に染み込んでいるからで、この町の資質とか魅力の源泉もそこにあるのことを改めて思い起こさせてくれ
ます。そんな実感は、今回会場や旅館や居酒屋で接した人々から強く伝わってくるものでした。私の会場に来られた人達
は、風景画の傍に展示した数点のおわらの絵を見て目を輝かせてくれました。居酒屋で周囲のお客さんと徐々にうち解
け、話がおわらに向くと皆さん一段と熱気を帯び、親しげに、また誇らしげに話してくれたのが印象的でした。旅館の女将さ
んも、おわらの絵に感動してくれました。中にはおわらに批判的な意見も耳にしましたが、それも、おわらのあり方とか、市
町村合併を機にしてこれからの町のあり方に絡んだ意見でした。町内には、直接おわらをやって来なかった人が少なから
ずいることも今回知りましたが、そういう人達も何らかの形でおわらと係わっているのも事実で、これほどに強いアイデンテ
ィティーを宿している町も、他に例を見ないと言えるでしょう。
 坂のまちアートも、むしろこうしたアイデンティティーと自然体で融和し、住民の皆さんともども八尾の誇りと喜びを共有でき
るような方向に軸足をおいて盛り上がっていけば、魅力度もアップそれこそPR効果も高まって全国区での知名度と集客を
期待できるようになっていくのでは・・とも考えるのでした。

 とにかく、貴重な経験をさせてもらい、私としては八尾の町が一層身近に感じられるようになりました。参加したアーティス
ト仲間の何人かと顔見知りもできました。おわらはもちろんですが、機会があればまた来年もこのイベントに・・と思っていま
す。おわらファンもそうでない方も、一度オフシーズンの八尾にもお出かけになることを勧めます・・・などと、私も一端の口
をきくようになりました。
 そういえば、おわらの季節にはついぞ花を見かけなかった酔芙蓉があちこちの軒先で咲いてました。この花、実はおわら
が終わった後、9月中旬頃から咲くのだそうで、「風の盆恋歌」にはちと誇張があったというわけです。


○谷川岳山麓へ(30/June 更新)

 6月15日、梅雨休みの晴れ間をうかがって、昨秋訪れた谷川岳周辺に再び足を運びました。あのブナ林や一ノ倉沢がい
まどうなっているのか、ずっと気になっていたこともありました。さすがに6月も半ばとなると、緑一面の山腹はボリューム感
を増したようで、一ノ倉沢は大きめの雪渓を残してはいるものの、乾いた岸壁を草の青が縁取るようにして、朝日を正面か
ら浴びて佇んでいました。今回は稜線までの全貌が見渡せたので、一段とその高みが迫ってきます。一ノ倉沢出合いから
少し歩いて木洩れ日の林道をスケッチ、その後出合いに戻って岸壁をスケッチ→ともにスケッチ館に展示。昼時となっ
たので水上に降りて、インター近くの蕎麦屋(「一翠」といったか)で昼食。ここは値段が高いのが難点だけど、味はなかな
かのものでした。
 午後は月夜野方面にクルマを走らせ、またまた谷川連峰の眺望探しです。早朝関越道を走っていて、135キロポスト辺り
からちらっと見えた谷川岳の稜線が印象的だったので、その辺りとめぼしき場所を求めてクルマでほっつき走り(こんな言
葉あったか?)、ついにその付近の農道に出ることができました。ウ〜ン、ここはなかなかのスポット。雪をかぶる頃は、あ
の白くたおやかな稜線がさぞかし良かろう・・などと独りごちて、ここでもスケッチを一点→スケッチ館に展示
  因みに、道々出会ったお百姓さんに、「ここらで谷川岳がよく見える場所がないですか」と訊ねたのですが、みんな「さぁ〜
て」と首をかしげるばかりでした。それはそうでしょう、汗水垂らして土と向き合っているお百姓さんには、何の伊達だか酔狂
だか、そんな眺めに血道をあげている私の方が、余程変わり者に映ったに違いありません。


○ふらっと道志村へ
 
 5月26日、新緑と清流の風景を描きたくなり、思い立って道志村までドライブしました。ここは丹沢の峰を境にお隣の山梨
県になってしまうのですが、我が家からはクルマで1時間半ほど。道々クルマのラジオで聞いた話では、最近、森の人体に
与える効用を科学で解き明かそうという動きが本格化しつつあるとのことです。森の放つフィトンチッドのせいだとか、緑が
目に優しいとか、非日常的な静かさがストレスから解放させるとか、いろいろ説があるようですが、ともかくそこに身を置い
てみれば文句なく気持ちがいい・・ただそれだけで、森は人間にいいことをしているに違いありません。その森と清流との組
み合わせとなれば、これはもう文句なく最高!
 道志村は近年、余りにも観光地化し過ぎたきらいはありますが、それでも道志川の水辺に降り立つと、ひと山超えた都会
の喧噪が嘘のようです。渓流釣りの人達をあちこちで見かけます。両岸からちょっととうの立った新緑に守られるようにして
流れる道志川。その流れは、何とも清涼な空気をも一緒に運んできます。スケッチをしていると、虫がのこのこと画面上を
歩き回ります。そんな中で、心地よく2点ほどスケッチをしてきました→スケッチ館に展示


○新緑を求めて

 5月の連休前後に、私は例年新緑を求めて遠出をします。
 4月末には、長野県の伊那に。ここには利用できる山荘があって、春の山菜をお目当てに、10年ほど前から通い続けて
います。天竜川右岸の丘陵からは、対岸の山々の向こうに南アルプスの白い峰々が、ぽっかりと空に浮いている光景を一
望できます。左手から甲斐駒、正面の千丈、続いて北岳の南陵から連なる白根三山、さらに南には荒川岳、赤石岳・・と、
3千メートル級の山々がパノラミックに広がる姿をこんなにゆったりと眺められる場所も少ないでしょう。
「天空に雪の峰あり伊那路かな」・・・先輩で友人のAさんが謳った句ですが、本当にそんな趣です。加えて、麓の新緑や躍
動する渓流・・・私にとって伊那のご馳走は、山菜ばかりではありません。風景画画廊に展示してある「伊那谷の春」「春
ほとばしる」は、そんな風景たちとの出会いを描いてみたものです。
 とは言いつつも、旬の山菜はやはり春の伊那のメインディッシュです。コシアブラ、ヤマウコギ、フタバハギ(現地ではアズ
キッパ)、トトキ、それにコゴミやタラノメ(最近はなかなかありつけなくなった)などなど、自然の恵みの何とありがたいこと
か!
 小黒川渓谷で描いたスケッチを2点展示します→スケッチ館に展示

 連休後の週に、友人が庵を構えた八ヶ岳高原の長坂に押しかけました。今年の春は足が速く、新緑も既に落ち着いた
緑に変わりつつあって、初夏の風情さえ感じさせます。天気が今ひとつ優れず、八ヶ岳はついにその姿を見せませんでした
が、小海線に乗ってちょっとだけ立ち寄った野辺山では、ヤマナシの白い花が満開でした。
今回は天気の具合もあって、絵のモチーフを仕入れることができませんでしたが、昨年、長坂町のある場所で描いた八ヶ
岳うららか」を新しく展示しました。越中久保溜池という所で、池越しの眺望は、八ヶ岳を臨むとびっきりの一等地です。こ
の高原一帯には度々足を運んでいますので、これからも当画廊で高原の空気を吸いながら描いた作品をご覧いただきた
いと思っています。


○北海道ニセコ

 3月末、恒例の北海道スキーに行ってきました。今年はニセコひらふ。北海道もご多分に漏れずに暖冬、例年より雪も少
なめで溶け具合も早いといった感じでした。連日いい日和に恵まれて、二日続きで羊蹄山が天辺までその姿を見せてくれ
たのは珍しいことです。こうなるとわたくし、スキーをほったらかしてふらっと出かけたくなる性分で、今回も早速レンタカーを
借りてニセコ高原をあちこちと駆けめぐって、スケッチと写真撮影をしてきました。
 
 風の強い日で、雪の原野から仰ぎ見るニセコアンヌプリは頂上付近を雲が飛ぶように流れていました。雪原ではあちこち
でトラクターが黒っぽい融雪剤を捲いており、早くも耕作への準備が始まっている様子。羊蹄山をぐるっと取り巻くように流
れる尻別川は、既にその水かさが増え始めて、岸辺の様子も春の訪れ間近といった気配です。→ともにスケッチ館に展
。北海道はどんな画角を取ってもゆったりと大きい・・・そこが魅力と言えるでしょうか。だからやっぱり、スキーをさぼっ
てはこうして原野に降り立って、風景と向き合ってしまうというわけです。
 最終日もまたまたスキーをさぼって、札幌の友人に積丹半島に連れて行ってもらいました。春浅い積丹の海と寿司ネタも
また絶品でした!


○越後方面へ
 
 2月18〜19日、新潟県の天気予報が珍しく晴で気温も上がりそうだったので、急遽雪国への遠出をすることにしまし 
た。いつかTVの画面で見た巻機山の姿が印象的だったので、これを狙って例によって関越道の塩沢PAで日の出を待 
機。幸い予報通りで暖かく、白んできた空は天気のいい一日を期待させるものでした。しかし、峠道を上って太陽が顔を 
出す頃になると、温められた大気は全体に霞がかかったようにぼやけ、肝心の巻機山もその輪郭さえはっきりしませ  
ん。仕方ないので、陽の当たり始めた魚沼平野に降り、いいスポットを探し回って姿のいい山をスケッチ→スケッチ館 
展示。たっぷりと雪をいただいた越後の山々は、どこかおっとりと優しげです。越後は酒のメッカなのでちゃんと調達 をし
てから、その後は17号線を戻って三国峠を越えることに。

 2月の三国峠越えはちょっと厄介なのですが、幸いこの暖かさで凍結も積雪もなし、四駆のノーマルタイアで問題なく  
走れたのはラッキー。峠道の左右に迫る山肌は、さすがに雪深い国越えの難所だけあって、冬の自然剥き出しといった 
風情です。1000b前後になると、ここもブナ主体の広葉樹が斜面を覆っていて、枯れ木の密集と白い斜面の描き出す  
模様が如何にも冬の山。ウーン、これはちょっと絵心をそそるのですが、時間がかかりそうなので写真撮影だけに留めま
す。それにしても苗場は凄いですね!20年振りにここを通って驚きました。まるで砂漠の中に姿を現すラスヴェガスの  
ように、雪深い山中に突如原宿の町でも登場したかのような錯覚を覚えました。峠を越えて猿ヶ京温泉から再び山中に 入
り、今回の目的の一つだった谷川連峰の眺望を漸く探し当てました。谷川連 峰は魅力に満ちた姿なのに、なかなか 人
里からはその全貌を見せない山並みなのです。実は以前からずっとその姿を 探し続けてたのですが、今回はとに  かく
それを発見、いずれ私の作品集に載っけたいと思っています。


○京都に寄り道して・・  
 
 12月の初めに京都府美山町にある京大の研究林見学に行きました。高木探査倶楽部というちょっと変わった有志の 
会に入っていて、この会では、日本の森を彩る樹木への関心が高じて、時折大学の演習林を見学させてもらってます。 私
の風景画に木をモチーフにしたものが多いのも、ひとつには日本の風景は何処を捉えても樹木が登場するのと、もう 一つ
は、そのせいもあってか、私自身が木々への強い愛着を持つようになったためと言えます。さて、本題はその折に 立ち寄
った京都のことです。構えて京都を観るというよりも、私の場合はこうした機会に足を伸ばして何処かを覗いてく  るという
ケースが多いのですが、今回は修学旅行以来行ったことがなかった清水寺とその周辺を歩いてみました。紅葉 が既に終
わりを迎えているのにここは相変わらずの人出です。それでも高台の道から眺める本堂の姿は、モミジと例の 清水の舞
台がアクセントになって魅力的なものです。スケッチしている人を横目にして(絵はがきやポスターで有名なこう した代表的
な光景は、なかなか絵にしにくいという言い訳で私は敬遠)、三年坂〜二年坂へ。その辺りの左手、人家の  屋根瓦と八
坂の塔が重なる風景がなかなかいいのです。その甍の風景を高台寺の境内からスケッチ→スケッチ館に 展示。すっ
かり身体が冷えたので近くでコーヒーを飲み、その先知恩院まで足を伸ばしました。

 これも何時も思うことですが、日本文化を代表するこの京都市街にして、電信柱や電線が縦横に空間を過ぎっている 様
はどうにも気になります。せめて寺社の周辺市街だけでも地中化できないものなのか。帰ってからTVで見た世界遺  産
の紹介では、クロアチアのドゥブロヴニク旧市街をはじめ、欧州では市街地全体が世界遺産に指定されて所がたくさ んあ
ります。もちろん、こういう場所では看板も電信柱もありません。元々電線地中化の歴史も古いこともありますが、  景観
に対する市民や行政の意識が根本的に違うようです。世界遺産云々よりも、日本の文化遺産を象徴する京都か  ら、一
歩踏み込んだ景観行政を期待したいものです。何回か乗ったタクシーの運転手さんから共通して聞いたこと・・・  今年の
紅葉は今一冴えない・・長距離客が増えていて景気回復の実感がある・・この通りなら明るい話です!


○紅葉〜谷川岳周辺へ
 
 思い立って10月22〜23日、谷川岳周辺に出かけました。例によって高速道のサービスエリアで夜を明かし、朝一番 で
水上から一ノ倉沢へ、さらにそこから徒歩で小一時間の逍遙。この辺り一帯のブナ林は、高度を上げるに連れて黄葉 が
ピークとなり、ブナをはじめ、ミズナラ、イタヤカエデ、ヤマモミジ、ハリギリなどなどの織りなす黄や赤は、はるか昔ス キー
でしか来たことのなかった私には実に新鮮で、それだけで嬉しくなってしまいます。それに、谷川岳東壁の俄俄とし た姿、
特に一ノ倉沢は凄いですね!あの高さと深さ、人を一切拒絶するようでいて、人の心を誘い込むような独特の空 気が一
帯を支配しています。悪女の魅力とはこんなもんでしょうか(私には分かりませんが)?その魔性の淵に向かっ  て、絢爛
綾をなす紅葉の斜面がせり上がっている様が好対照です。いずれこの印象を絵にしたいとスケッチだけに留め ました
スケッチ館に展示。その場を10時には引き揚げたのですが、下りは上ってくるクルマとのすれ違いに    難があって、
おかげで山中での大渋 滞に巻き込まれてしまいました。オンシーズンのお出かけは時間帯によっては要 注意です。
 
 湯桧曽に下りてから今度は 県道63号(水上片品線)を時計回りに走って片品へ。途中、渓流沿いのカツラや林の中の
コシアブラ、高度をずっと上げて尾瀬近くではダケカンバが白い幹を晒して印象的でした。その辺りにくると雨模様となり、
気温も5度にまで下がって、冬の間近いことを実感します。夏の不順な天候のせいか、今年の紅葉は全体的に今ひとつで
あったような気もしますが、何時も出かけるとたびに自然は季節の装いを懲らして迎えてくれます。これがあるから遠出は
欠かせません。▲戻る)


○2003年「おわら風の盆」・・・2003年10月24日に当HPをアップロード後、初のフィールドノートです!

 9月2〜4日、今年で4回目になる「おわら」は、昨年ほどの猛暑ではなかったものの、やっぱり暑さとの闘いで体力を消
耗しました。クルマに寝泊まりして動き回る私にとって、必需品はTシャツとタオル手ぬぐいの替え。小休止に使う携帯用の
折りたたみ椅子も大いに役立ちました。それでも今年は最終日の日中にゲリラ的な豪雨があって、そのせいかこの日の人
出は例年より少なめで、おかげでちょっぴり余裕を持って「おわら」を堪能できました。

 何時も思うこと。それは、この伝統芸能の保存には、見る側のマナーが不可欠ということです。いいオーケストラはいい聴
衆を得て育ち、いい演奏をするといいます。私たちも、常にいい観客として心して「おわら」に接する態度を忘れてはならな
いと思うのです。特に、若者不足は八尾の町とて例外ではなく、町内によっては踊り手の減少という事態に直面しつつある
ようです。少人数でもいいおわらを演じ続けて欲しいと切に願っていますが、そのために我々観客側がきることは、静かに
見守ること、そういう 態度でおわらを盛り上げることでしかありません。この点、観光バスの団体客のマナーの悪さが毎年
気になります。観光会社は少なくともツアー募集と実施に当たっての啓蒙と注意をもっと徹底して欲しいと思うのは私だけで
はないでしょう。久しぶりに余裕を持って「おわら」に接することができた最終日、よく通る地方のおわら節に踊りが浮き立つ
様を目の当たりにして、そんなことを改めて感じました。








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